初めてソロでブルベ200kmを目指す人へ

ロードバイクに数年乗っていると、自然と耳に入ってくる「ブルベ」という単語。

これは、決められた距離を規定時間内にクリアする走力テストのようなものです。

おおよそのサイクリストは、このブルベというものに遭遇しても「ふーん」ぐらいで終わると思いますが、マンネリ化してきたロードバイクライフに刺激を得るべく、この”ブルベ”を目指すという方も出てきます。

そこで今回は、実際にブルベに興味を持ち、ブルベの中で最短の200kmではあるものの、その目標をクリアした私の実体験を基に、これから初めてブルベに挑戦する方の背中をソッと押すためにこの記事を書きました。

「200kmぐらい余裕でしょww」という方もいると思いますが、この記事は「普段は100kmぐらいが精一杯だけど、200kmという目標に挑戦してみたい」という方を対象としました。

この記事はこんな方向け
  • 初めて”ソロで“ブルベに挑戦する
  • ブルベ参加にあたって、(心構えも含めて)どういう準備が必要なのか知りたい
  • ブルベに参加してみたい気持ち(背中)を押してほしい

タイトルでは「アドバイス」などと偉そうに書いていますが、私は200kmを2回走破した程度で、300km以上のブルベには挑戦したことはありません。そのぐらいの人間が書いたものだと割り切って、お読みいただければ幸いです。

また、本記事は“ソロでの挑戦”という視点で書いていますが、複数人で一緒に参加する場合にも参考になるかと思います。ただ、もし一緒に走る人がベテランであれば、こんな記事は見ずに、そのベテラン様のアドバイスに従うことを強くオススメします。

ブルベ200kmとは

「ブルベ200km」とは、自転車の長距離走行イベントで、一定の距離(この場合は200km)を規定時間内(13時間30分以内)に完走することを目標とします。このイベントの特徴は、競争ではなく個人の挑戦と持久力が重視されることです。また、道路状況や天候に左右されるアウトドアイベントであり、参加者は自転車のメンテナンスや栄養管理など、多くのスキルが求められます。

その魅力は、自分自身の限界に挑戦し、達成感を味わえることにあります。また、美しい景色を楽しみながら走ることができ、同じ趣味を持つ仲間との交流も楽しめます。自然と共に時間を過ごし、体力と精神力を鍛えることができるのがブルベ200kmの大きな魅力です。

ブルベ200kmに挑戦した動機は、「漠然と自分の力を試したかったのと、自分で計画して200km走るのが面倒だから誰かのコースにあやかりたい」というのが理由です。

ちなみに、どうやって200km走ったことを証明するかというと、所々にポイント(コンビニや観光名所など)が設けられていて、ゴール受付にて、その全ポイントに寄ったという証拠書類(レシート)やデータ(写真)を提示することで認定される形になります。

ブルベに出走する方法

ブルベは、国内では「オダックス・ジャパン(Audax Japan)」というボランティア団体が統括をしています。

そして、ブルベの出走登録は、各地域のランドヌールクラブから申込みをする形になります。

調べたい時は、Googleで「◯◯県 ブルベ」と検索すればすぐに出てくるかと思います。

参考までに、私の住む福岡県のランドヌールクラブである「AJ福岡」のサイトはこちらです。

ブルベの参加費は概ね2,000円以下となっていて、そこまで高価ではないというのが良いところではありますが、その代わり、運営からあらゆるサポート(交通誘導、エイド、回収車など)を受けることができません。

初ブルベのコース選定

ブルベを探すと、同じ200kmを走るコースでも様々な難易度のものがあることが分かります。

玄人向けの山岳ハードコース(獲得標高3,000〜4,000m)もあったりしますが、そこは避けて平坦中心のソフトコースを選択しましょう。本数は少ないですが、「獲得標高2,000m以下」があったら即決してOKです。

福岡の例だと、「初心者向け」ということを謳っているコースもあったりしますので、他県でもおそらくブルベ初心者をターゲットとしたブルベがあるかと思います。(福岡県の隣県である熊本県のブルベコースにも初心者向けがありました)

初心者向けは平坦中心で構成されているので、初めての場合はそちらを選ぶと良いです。ただ、平坦ということは市街地を多く走るということとほぼ同義なので、周りの交通への配慮や信号ストップがどうしても多くなります。

申込み時の注意点

申込みにあたって、「200kmが走行できる健康体」であることはもちろんですが、注意すべき事項があります。

  1. あらゆるリスクは自己責任(パンクや事故など自転車トラブルはすべて自分で対処する必要がある)
  2. 規定を満たす自転車保険に加入していること

1に関しては、まぁそうだよねって感じですが、2については注意が必要です。

ロードバイクに乗るうえで、任意の自転車保険には加入しているかと思いますが、その保険が「規定を満たす自転車保険」という条件を満たしている必要があります。

参考までに、私はau損保の自転車向け保険「Bycle」のゴールドコースを契約しています。月額で契約すると1,000円以上もするのですが、保証内容もよく、自分に万一のことがあった場合に家族を守るという意味で”リスクへの投資”と割り切って契約しています。

事前準備

身体づくり(トレーニング)

さて、満を持してブルベに申し込みをしたら、まずは200kmを走れる身体をつくっていきます。

正直、20代ぐらいで体力もある人なら、ここの項目はすっ飛ばして大丈夫です。あくまで初老に片足突っ込んだオジさんが200km走るためにした準備だと思ってください。

200km走破に向けて必要なのは、長時間走行に耐えうる心肺機能と脚力、そして(特に初心者は)お尻の痛み。

ということで、ブルベ1ヶ月ほど前から、スマートローラーを活用したL2トレーニングを中心に実施しました。

ロードバイクにおける「L2トレーニング」とは、低強度で長時間行う持久力トレーニングの一種です。この「L2」とは、パワーゾーンの区分の一つで、通常5段階または7段階のパワーゾーンの中で第2レベルを指します。

L2トレーニングは、運動強度を自分の最大心拍数の約60-70%程度に保ち、長時間走行を行うことが特徴で、L2トレーニングの目的は、基礎体力の向上、脂肪燃焼の促進、持久力の強化などです。低強度ながら長時間続けることで、体が長期間の運動に耐えられるようになり、効率的なエネルギー利用や疲労回復能力の向上にもつながります。

簡単に言うと「“走りながら喋れるぐらいの強度”で長い時間回すことによって、基礎体力を上げるトレーニング」という感じです。

私は、バーチャルサイクリング「Zwift」で、「ユンボヴィスマ・メンズチーム」という、ぴったり1時間のL2トレーニングをやりこみました。

また、Zwiftの合間で、ブルベの少し前に、200kmの半分である100kmを走り、200kmのイメージを作っていきました。その中で、Zwiftの効果を実走で実感できたのは自身につながりました。

各種装備の準備

ブルベは、かんかん照りの晴天であっても反射ベストの着用が義務付けられています。

私はナイトライドをするために過去買っていたのですが、持っていない人は購入する必要があります。

その他でいくと、正直、50km〜100km程度を走る時と準備の量はほとんど変わりません。そういう意味でも200kmは”ほどよい距離“と言えるでしょう。(長い距離だけど、、

ただ、ブルベはコースが決められているだけで、そこを走るのは完全に自己責任であり、100km地点でトラブルでリタイアしても誰も迎えにきてくれませんので、必要最低限の装備は持っておくようにしましょう。

私は上記リストのものを、TOPEAKの大きめにバッグ(Lサイズ)に入れて走りました。荷物が少なければ潰してコンパクトにもなるし、付けていてそこまで違和感を感じないところが気に入ってます。

TOPEAKのバッグローダーは1泊2日旅行に超便利だった

また、コースから外れてしまっては本末転倒なので、コースが分かるためのマップ情報を持っておく必要があります。サイクルコンピュータをお持ちの方であれば、サイクルコンピュータに入れておくのが無難でしょう。

なお、ブルベの中にはナイトライドのものもあるので、その時はライトを複数持ったり、モバイルバッテリーが必要になるでしょう。(夜中の道でライトが切れたら悲惨、というより命に関わるので)

ひととおりモノを揃えたら、前日までに詰め込みや、各種充電(サイクルコンピュータ、ライト、電動シフト、モバイルバッテリー、スマホなど)を忘れないようにしましょう。

ここまで読んで、「え、さすがにもっと準備が必要じゃない?」と思う方もいるかと思いますが、「この準備でダメだったら諦めがつく」というのが”200km”という距離だと考えています。

300km以上のブルベになると、さすがに「200km地点でトラブルによるDNF(途中棄権)はしたくない・・・!」と思いますが、200kmの途中であれば、簡易的な処置で対処できない場合には「まぁ、また今度の機会にするか」と割り切れると思っています。ここは人それぞれで考え方が異なるので、リスクをしっかり考えられる方は、しっかりとした装備をしましょう。

ブルベ当日

さぁ、しっかり準備をして迎えた本番当日。

まずは、スタート地点まで移動します。きっと、ウキウキよりも不安の方が強いことでしょう。

スタート地点には、30分前には到着しておきましょう。

周りはブルベに慣れたベテラン勢とかがいて、みんな顔見知りでワイワイ〜みたいな雰囲気になっていますが、ジッと耐えましょう。もちろん、陽キャの人は飛び込んで行って話しかけるのが吉です。おそらく歓迎してもらえると思います。

スタート地点が近づいてくると、ブリーフィングと呼ばれる事前説明があります。

ここで説明される内容はとても重要なので、しっかりと聞くようにしましょう。コースの細かい変更・修正や、交通量情報、間違えやすいルートなど教えてくれます。

また、合わせて車検も実施されますので、反射ベストやライトもしっかり装着しておきましょう。

ブリーフィングと車検が終わったら、いよいよ出発となります。

スタート直後の動き

高いモチベーションでスタート。

「周りの人たちも最初から飛ばなぁ・・・、これぐらいのスピードで行かないと間に合わないのか!」

と、ついつい速い人たちについて行く・・・。

はい、これダメなパターンです。

最初から飛ばすのは、ほぼベテランの人たちだと思っていいので、ついていくのはやめましょう。ムダに体力を消耗するだけです。

計算すると分かりますが、ブルベの制限時間は「13時間30分」で、距離が200kmなので、

 200(km)/13.5(時間)=14.8km/h

単純計算ですが、15km/hで走り続ければ無事にゴールできるということになります。

実際に15km/hで走ると分かりますが、ロードバイクで15km/hはめちゃくちゃゆっくりです。平坦であれば、普通に回してるだけで20km/h以上は出るものです。

つまりここでは、それぐらいゆっくり走っても間に合うんだよということを分かっていただければ良いと思います。実際には休憩や規定ポイントでの停車があるので簡単な話ではありませんが、途中2時間30分ぐらい休憩するとしても、

 200(km) / ( 13.5 – 2.5 (時間) )=18.2km/h

となるので、山ばかりのコースではない限り、そんなに焦って走る必要がないということが分かるかと思います。

よって、スタート直後は周りに流されることなく、「みんな速いなぁ」ぐらいでサラッと流すのが吉です。

ライド中の動き方

ライド中は、ひたすらにマップを見ながら指定の道を外れないことと、時間との勝負になります。とはいえ、先述のとおり時間はあるので、焦る必要はありません。

必死になりすぎると水分補給も忘れがちなので、水分も意識して摂るようにしましょう。私は、サイクルコンピュータで、20分おきにアラートが鳴るようにしていました。(私が使用しているGarmin 840には水分補給アラート機能があります)

ブルベ前に「Garmin Edge 840 Solar」を買って良かったという話

また、お尻の痛みが気になる方は、痛くないタイミングから定期的にダンシングをするようにしましょう。私も意識せずに走っていると100kmぐらいからお尻が痛くなるのですが、ブルベでは15分おきぐらいにサドルからお尻を離すことで、大きな痛みを感じることなく走り切ることができました。

あと、信号停車時もサドルから腰を下ろすと、多少なりお尻への負担が抑えられるのでオススメです。

ここはブルベのコース次第というところではありますが、街中を走る場合は、所々にコンビニや自動販売機があるので補給食は必要ないと考えています。

ただ、田舎道や山道はそうはいかないので、そのようなルート設計がされているブルベでは、補給食やドリンクの予備を持って行く方が良いでしょう。

また、これは脚質や好みにもよりますが、ケイデンスは80〜90rpmぐらいに保つようにするのが、足の疲労度を抑えるコツです。

サイクリストはエネルギー消費量よりも脚が疲労しにくいことを優先して、ギアの重さとペダル回転数を選んでいるようです。80〜90回転という高速回転により、筋放電量増加率は最も低くなって脚は疲労しにくくなり、酸素消費量は上昇して心拍数が上がり運動強度は高くなっています。

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走っている時は「あと残り何キロ・・・」と考えたくもなりますが、少なくとも最初の100kmは純粋に楽しみましょう。じゃないとツラいだけなので、、。

ライド中に気をつけるポイント

先述のとおり、ブルベはただ走るだけなく、途中にクリアすべきポイントがあります。

そのほとんどは、指定コンビニでのレシート、指定場所での撮影になるのですが、普段レシートを受け取るクセがない方は、ついクセで「レシートはいいです〜」と言わないように注意しましょう。

また、安全性を高めるために、日中帯であってもライト(いわゆるデイライト)を点けておくようにすることを強くオススメします。少なくとも、クルマの運転手からの視認性は上がるので、自分の身を守ることにつながります。

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完走後

無事に完走したら、受付でレシート等を渡してチェックしてもらいましょう。

その場でメダルを購入するか聞かれるので、別途有料(1,000円ぐらい)にはなりますが、頑張った記念として購入しちゃいましょう。(数年おきにメダルのデザインは変わります)

ブルベを完走し、充実感に満たされていることと思いますが、自宅に帰るまでがブルベです。気をつけて帰りましょう!

ちなみに、私は自宅から少し遠いスタート地点のブルベを選んだこともあり、ブルベ完走後にそのまま高速道路を運転したら意識が飛びかけました。初ブルベ完走後の休憩なし運転は辞めた方が良いです、、、

おわりに

なんだか、ここまで偉そうに書きましたが、私はブルベ当日が悪天候だった場合は、平気でDNS(棄権)します。これは純粋に「びしょ濡れ状態で自転車を楽しめない」のと「事故のリスクが上がる」からです。

ブルベの根底は”自転車を楽しむ”ことです。楽しめないものに参加するべきではありません。

私は、「ブルベに挑戦してみたい!」という決断をしたあなたを、心から応援します。

長文になってしまいましたが、これからブルベに参加する方々の参考になれば幸いです。

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